羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
ぼとり、と。
無抵抗に、切り落とされた酒童の右腕は、村雨丸を手に握ったまま、地に転がった。
「うぐっ……‼」
言葉にならない悲鳴が、喉から顔を出しそうになる。
酒童はそれを噛み殺してみせたが、やはり痛みは消えない。
怪我をしたことはあっても、肉と骨を立たれた経験はない。
肘から先がない事への違和感と、生理的嫌悪感が身体をほとばしる。
頭が思考するのをほぼ完全に停止した。
酒童は眼前に西洋妖怪がいるというのに、痛みと衝撃のあまり背中から倒れた。
「てめえ」
酒童の赤らむ視界には、鮮明に、人狼への殺意に燃えたぎり、猟銃を構える後輩の姿が写った。