羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
数年前のあの日から、朱尾は幾度と、心のうちで謝り続けた。
自分は酒童のようにはなれない。
しかし、今この状況下でだけは、むしろ酒童を真似なくて良かったと思えた。
もし酒童を真似ていたら、きっと、朱尾は人狼を攻撃できなかった。
酒童はあの時、人狼の首を刎ね飛ばそうとしたとき、一瞬だけ、それを躊躇った。
だから、返り討ちにあったのだ。
元が人間だから。
たったそれだけの理由で、酒童は刀を振るのを躊躇った上に、相手に勝機を与えてしまった。
優しすぎた。
それゆえに、酒童はあの時、負けたのだ。