羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


 数年前のあの日から、朱尾は幾度と、心のうちで謝り続けた。

 自分は酒童のようにはなれない。






 しかし、今この状況下でだけは、むしろ酒童を真似なくて良かったと思えた。


もし酒童を真似ていたら、きっと、朱尾は人狼を攻撃できなかった。



 酒童はあの時、人狼の首を刎ね飛ばそうとしたとき、一瞬だけ、それを躊躇った。

だから、返り討ちにあったのだ。


 元が人間だから。


 たったそれだけの理由で、酒童は刀を振るのを躊躇った上に、相手に勝機を与えてしまった。


 優しすぎた。


 それゆえに、酒童はあの時、負けたのだ。





< 190 / 405 >

この作品をシェア

pagetop