羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
家が古い家系だったのか、もしくは趣味なのか。
とにかく陽頼は和風な料理を好んで作った。
陽頼がテーブルに、電子レンジにかけた五目煮豆を置く。
五目煮豆の、ごぼうと鳥肉と大豆に、ニンジンと椎茸が悲しげに埋れてしまっている。
「冷やご飯、まだたくさんあるなー」
冷凍庫に保管された、かちこちに凍った握り飯を出して、それも電子レンジにかけて解凍する。
そんな陽頼の、ちんまりとした背中を見つめていると、酒童はおのずと温和な気分になる。
この時間は、平和だ。
彼女が、そう思わせてくれる。
しかし無意識に、だが。
「……俺もやるわ」
酒童は陽頼の傍まで移動して、茶碗1杯分ほどの「冷凍握り飯」を2つ、電子レンジに放り込んだ。
氷塊も同然の「冷凍握り飯」を、もとの白飯に戻すには、少なくとも3分は必要だ。
それまでの間、おかずを全てテーブルに並べてしまった2人は、やる事をなくした。
「ふああー……」
冬眠から覚めた蛙のように、陽頼は長閑なあくびをする。