羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》




「もう、そこまで進んでしまいましたか」


 荒い呼吸を繰り返す酒童を見て、鬼門は落胆したように声を落とした。


「やっぱりこれは、羅刹の……?」


 恐々と問う酒童だった。

 いま、酒童にはこの腕が、凄まじく恐ろしいものに思える。

やはりこれは羅刹になったことへの副作用だろうか。

 しかし、酒童は羅刹に入隊して、はや9年はたつ。

これだけ時間が立ってからくる副作用など、あるのか。

 酒童には、この力に対してわからないことが多すぎた。

 すると鬼門は、首を横に振った。
 

「それが鬼の血のせいというならば、私も他のものも、とっくに、あなたのようになっているでしょう」

「け、けどっ……」

「あなただから。
……あなただからこそ、こうなるのです」


 鬼門はその瞬間、ぎりり、と歯を食いしばった。なぜか。

地区長のきつい無表情は、そんな鬼門に向けられていた。


「あなたは、羅刹です。
しかしただの、人口的に作られた羅刹ではない。

正真正銘の、鬼の血を継いだ“羅刹”だったからこそ……貴方はいま、こんなことになっている」





< 210 / 405 >

この作品をシェア

pagetop