羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「もう、そこまで進んでしまいましたか」
荒い呼吸を繰り返す酒童を見て、鬼門は落胆したように声を落とした。
「やっぱりこれは、羅刹の……?」
恐々と問う酒童だった。
いま、酒童にはこの腕が、凄まじく恐ろしいものに思える。
やはりこれは羅刹になったことへの副作用だろうか。
しかし、酒童は羅刹に入隊して、はや9年はたつ。
これだけ時間が立ってからくる副作用など、あるのか。
酒童には、この力に対してわからないことが多すぎた。
すると鬼門は、首を横に振った。
「それが鬼の血のせいというならば、私も他のものも、とっくに、あなたのようになっているでしょう」
「け、けどっ……」
「あなただから。
……あなただからこそ、こうなるのです」
鬼門はその瞬間、ぎりり、と歯を食いしばった。なぜか。
地区長のきつい無表情は、そんな鬼門に向けられていた。
「あなたは、羅刹です。
しかしただの、人口的に作られた羅刹ではない。
正真正銘の、鬼の血を継いだ“羅刹”だったからこそ……貴方はいま、こんなことになっている」