羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
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酒童は母親の顔を知らなかった。
もっと言えば、父の顔も知らなかった。
だから陽頼の両親を見て、はじめて、親というものの姿を知ったのだった。
物心がついた時から見ているものと言えば、自宅の天井の木目ではなく、シルバーの板が敷き詰められた天井と、LEDライトを使用した丸っこい電灯だけだった。
その人口的な光を、ただぼんやりと眺めていた記憶がある。
幼い酒童がいた部屋は、決して狭くはなかった。
遊ぶためのオモチャもあったし、組み立て式の滑り台もあった。
前後に揺れる木馬も、後ろに引けば勢いよく前進する車の模型も、着せ替え可能な女の人形も。
子供が欲しがりそうなものは、たくさんあった。
保育士もときどき来てくれて、遊んでくれることもあった。
生活習慣も、食生活も偏らないように、ごくごく普通の生活をしている子供と同じように、酒童は育てられた。
平凡で不自由と自由の入り混じった、人間らしい生活ができていたが、どこかその生活習慣は、マニュアルどおりに進められているようでもあった。