羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
そして装束の懐をがさごそと探ると、鬼門はなにやらそこから取り出して、酒童に向かって投げ渡した。
柊を型どった鉄製の葉が飾られた、銀の首飾りである。
ネックレスのようにも見えないことはないが、紐の部分は糸で作られている。
「約1世紀前、当時の呪法班により作られたものです」
首飾りを手にとると、その柊の葉はずっしりとした重みがあった。
「当時は投与する鬼の血の量が曖昧でしてね。
人の血より鬼の血が濃すぎて、ときおり頭がやられてしまうものもいたそうなのですよ」
「あたま」
自分のような状態になる、ということなのだろうか。
総じていえばそういうことなのだろうが、おそらくそういった鬼の本能に支配されるされないは、単に純粋な血族だからとかではなく、その血の濃度に左右されるのだろう。
「それで対策として、基準量が決定され公にされるまでの間、呪法班が総動員で、退魔の呪物を複数作り上げたのです。
それは、その半世紀前の残り」
「退魔……魔除けなんですか」
「鬼も“魔”ですからね。一応」
鬼門が熱いコーヒーの缶を握り、また一口含む。