羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
1
時刻は午後4時をまわっただろうか。
酒童はソファーの上で睡眠をとっていたが、携帯電話の着信音が激しく鳴ったので、頭を押さえながら携帯電話をとった。
「もしもし」
『あれっ。酒童さん、声が変ですけど、寝てたんですか?』
電話をかけてきたのは、茨だった。
その声の向こう側で、車の音だとか、「まじー?」というちゃらついた高い声がする。
どうやら、帰路の途中で酒童にかけてきたらしい。
「今起きた」
『ああ、そうですか、なんかすいません』
「それで、何の用だよ」
『班長の、鬼門(きもん)さんから伝言です。
今日は午後6時までに、拠点に集合。
会議を行うから、それに出席しろ、とのことらしいですよ』
「会議ぃ?」
酒童は耳を疑う。
羅刹は、作戦を立てるために集合したりはする。
しかし、それ以外では、羅刹の隊の中で、会議など行ったりはしない。
いいや、会議らしきものは行うが、それに参加するのは、
羅刹の隊長や、地区、市議会議員などといった、政治に関わる者たちだ。
だから、酒童が会議に呼ばれる理由は、毛頭ないのだが、呼ばれてしまったものは仕方が無い。
「はあー……。
わかった、行くよ」
『あい。
じゃあ、そう伝えておきますね』
そして、茨が電話を切ると、酒童は気怠さゆえに重く感じる身体を起こし、
朝に干した戦闘服を、他の洗濯物とまとめて取り込んだ。