羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「そ、そう、なの」
酒童は唇を引き結ぶ。
そう。
確かに陽頼は、いまも昔も変わらない。
子供っぽくて、良くも悪くも天然な性格、日本人形のような容姿、なにもかも、出会った時から変わっていない。
酒童も、髪型が刈り上げヘアから長髪になったのを除けば、何も変わっていない。
―――しかし、それは性格だとか、外見だけの話だ。
高校時代は「危険そうな顔で危険じゃない」と言われることもあったが、いまは違う。
今や酒童ほど、危ない生き物はいない。
先ほどよりも増して、嫌な腹痛が襲ってくる。
「……ごめん、やっぱ帰るわ」
「ん。今度また来やーねぇ」
そういう老婆に手を振り、酒童は猫背になって家路を歩いていった。
げほ、げほ、ごほっ、と、しゃがれた女性の咳き込む声が聞こえる。
はっとして振り返ったが、そこに老婆はいなかった。