羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



「ん……わかった。切ろう」


 酒童はすんなりとうなづいた。

 この長い髪は、好きで伸ばしていたわけではない。

商店街にあった床屋が閉店になってしまってからというもの、わざわざ商店街を越えた場所まで行かなくてはならなくなった。

 だから、単に遠出までして髪を切りに行くのも面倒になったので、伸ばしていただけだ。

なんの思い入れもないのだし、むしろ邪魔になってきた前髪がなくなるのなら好都合だ。


 ……陽頼の手元が狂わなければ、の、話だが。


 昔に天野田が面白半分で酒童の髪をいじったところ、下の髪をざっくりと切りすぎてしまい、最終的に刈り上げヘアにされ、クラスの密かな笑ものにされたのだった。

もちろん、髪を好きにさせた酒童も酒童なのだが、また刈り上げになってしまったとしても、笑い者で済むのならいい。


 怖がられ、畏れられるよりは、ずっと気分が良い。




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