羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「いま、名前で?」
「あ、私のクラスに“スドウ”って人いるし、こんがらがっちゃうから名前で呼ぶことにしたの」
彼女は言った。
酒童は「そ、そう」と言いつつも、内心ではどきりとしていた。
なにしろ同期でさえ下の名前で呼んでくれたことがほとんどないので、初めて下の名で呼ばれて新鮮だった。
「……そだ。
私の名前、まだ教えてなかったね」
女子生徒は後ろに組んでいた手を前に置いて、
「みなもとの、よりみつ」
と、1800年も前の武人の名を口にした。
そんなまさか、と呆然とする酒童に、彼女は舌を出した。
「うそ」
それから女子生徒は苦笑すると、「ひより」と自らの顔を指差した。
「源(みなもと)陽頼」