羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



「えっ……」


 陽頼の声の調子が一気に落ちるのを感じて、後頭部を殴打されたかのように眩暈がする。

 酒童が唇を噛み締めていると、陽頼が前に出てきて、


「なんで?」


 と、問うた。


 とても彼女の顔を見る気にはなれず、気を紛らわすように、酒童は首元に巻きつけたタオルを取る。


「……俺が危ないやつだから」


 酒童は茶を濁す。

 鬼だから、と唐突に言える気はしなかった。

 最初は浮気をしたという嘘でもつこうかと考えたが、いざ演習で言葉にしようとすると、酒童のほうが硬直して言葉にならなくなっていた。


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