羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
そして11月27日。
人狼襲撃事件から24時間が経過したこの時、羅刹の拠点は、天野田班および酒童班の面々の手当てで、仕事あとも大忙しであった。
他の隊員や呪法班数人が大部屋に集まり、あちらこちらで仲間を治療している。
「あちちっ……」
茨は呻いた。
強かに身体をアスファルトに打ち付けたため、茨の背は打撲傷で紅く腫れている。
そと時に擦りむいたのか、かすかに血も滲んでいた。
しかしそのかすり傷だけは、徐々に修復されて消えつつあった。
「ちょっと待っててね」
天野田は言うや胸元で水印を結び、「唵……」から始まる真言をぶつくさと唱えはじめた。
そしてその水印を結んだ手を、腫れ上がった背中に当てる。
「ひっ」
茨は情けのない声をあげる。
凍てつく氷のような冷たさが背中を襲う。
そんな茨の様子に、天野田はふっと苦笑する。
「冷たい?」
「うっ……けっこう冷たいです」
「なら良好だ。
すぐにその鈍痛もおさまってくるよ」
彼の言ったとおり、その冷たさが消えた時には、すでにじわじわと込み上げる鈍痛はなくなっていた。