羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
教官長室の中で聞こえてくる叱責に、外の廊下で盗み聞いていた青木は肩をすくめるばかりだった。
(どうして……)
どうして、本当のこと言わないの?
悪いのはあの子たちでしょ?
なんで、自分が悪いみたいに言ってるの?
青木は言ってやりたかった。
しかし、そこでも青木の小心さが祟った。
足を踏み出したものの、そこでぴたりと立ち止まる。
青木には、その教官長室のドアを開け放ち、真実を大声で述べてやる勇気などなかった。
結局、青木は教官長室の前で棒立ちになったまま、教官長と朱尾の会話を聞いているしかなかった。
「こんなことをしたら、退学は免れんぞ」
教官長の言葉が耳に響いて、青木は滝のように冷や汗が流れる。
その直後、朱尾がなんと言ったのかは聞き取れなかった。
青木の頭の中は、退学、の文字で埋め尽くされていた。
―――私のせいだ……。
青木は、そんな自責の念に責め立てられていた。