羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
結果として朱尾は退学処分を免れたが、しかし今までに積み上げてきた好成績は大幅に下げられた。
柔道場の騒動以来、保健室はいつも以上に静かになった。
(あれは)
騒動から数日がたった頃、青木は朱尾を見かけなくなった。
保健室が羅刹の一般教育用に設けられた教室から遠いためか、前から羅刹の訓練生がここを訪れることは少ない。
しかし、朱尾は好んで頻繁にここへやってきた。
だから、何日も彼がここに姿を見せないのは異常だった。
……なんとなく、青木はその理由がわかっていた。
きっと、自分が助けを求めたせいでこうなったのだと、彼は怒っているにちがいない。
もう、顔もみたくないのだろう。
一言だけでもいいから謝りたい。
そんな青木の願いなど知ったことかとばかりに、どれだけ待っても、どれだけ訓練場内を探しても、彼が現れることはなかった。
それからというもの、青木は昼休みを、毎度のようにその静寂な保健室で過ごした。
いたっていつもと変わりはないが、青木には、朱尾がいるかいないかの差が、山谷の差であるように感じられた。