羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
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すこしの間だが、友達ができた。
クラスとも馴染めた。
孤立している、という自分の陰気な印象を消すことができた。
―――なにもかも、青木が保健室にいかなくなり、教室で過ごすことが多くなってからの出来事であった。
朱尾のいない保健室では、青木はもはや行く気にはなれなかった。
今までずっと、自分の居場所であった保健室が、いつしか、朱尾がいてこそ本当に自分が自分になれる場所、になっていた。
大げさに言ってしまえば、朱尾が保健室に来なくなったのが遠因で、青木は卒業までの間、ほとんど充実した時間を過ごせた。
朱尾が直接影響しているということではないが、彼という存在をなくして、青木はまた違う幸せを手にすることができたのだった。
しかし感謝する一方で、やはり青木は、朱尾に対して申し訳のない気持ちでいた。
あの時、他人に助けを求めようとするのではなく、自分が奮い立って助けに入っていれば良かったのだ。
青木および呪法学の生徒の身体は一般人と大差がない。
彼らが下手に青木に手を出せば、訓練生のほうに厳罰が下される。
それこそ、大人並みの刑罰が、だ。
そんな保険があるのだから、怖がらずに、自分が飛び込んで行けば良かったのに。
青木は晴れやかな思いで卒業してもなを、朱尾へとやるせない思いは、人生初の淡い情とともに、深い傷跡のように残っていた。