羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
3
「やっぱり、酒童くんは自分の考えでは納得できないやつだね」
天野田は言った。
今日からしばらくは、酒童班と天野田班は共同作業となり、2班で2つの地区を担当する。
公園近くにある樹齢50年の杉の木の枝に乗って、酒童たちは西洋妖怪を待ち構えている。
「えっ?」
「君は自分のことになると、自分の意見だけでは納得できないやつってことさ。
他人から意見を求め、他人の意見にのみ従うことが多い。
さっきだって、周りが君の存在を受け入れていることがわかって、ようやく納得したじゃないか」
天野田に指摘され、酒童は村雨丸の鞘に触れて黙りこくった。
「自分の意見に従うやつは、必ずしも自己中心的な思考の人間とは限らない。
そういうやつの中には、自分の可能性を信じたおかげで、前に進める人間だっているさ」
その刹那、闇の先に夕焼けのような明かりが灯った。
明かり、ではない。
一瞬強く吹かれた焔である。
「きたね」
天野田が抜刀する。
その視線の先では、大型のワニほどもある亀がこちらに向かってきている。
蛇の頭部と、同じく蛇の尻尾。
四本の脚を持ち、亀の甲羅に緑色の皮膚。
身体には獅子の鬣のような長い毛で覆われている。
また、背中には棘のようなものが背骨に沿って生えている。
ペルーダと呼ばれる西洋妖怪である。