羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「2人で駆除作業をするなんて、まるで新米だった頃に戻ったみたいだねえ」
天野田は張り切っている。
まだ羅刹になって間もない頃、酒童と天野田は鬼門班に所属し、駆除作業に従事していた。
もう8年もまえのことである。
酒童はさきほどの陰鬱な気持ちを切り替えるように、両頬を思い切り叩く。
「ああ、懐かしいな」
ここ最近、笑顔を作っていなかった顔をほころばせ、酒童はわずかに明るくなった。
呪法班によれば、今日この地区に現れるペルーダの数は5頭だ。
天野田の班員たちが囮を、酒童の班員たちがトドメを担う。
「悪い。お前の班に囮役させるなんて……」
「いやいや、なに謝ってんの?
これは君の作戦じゃなく、私が立てた作戦だ。
心配無用、私たちは討伐よりも討伐補佐に向いているんだ」
天野田が不敵に笑む。
「さあ、いくよ」
そう言うや、天野田率いる班員たちは先に下へと飛び降りた。
化け物の硬質な肉を絶つ音。
蛇でも亀でもない、ぞくりとする金切り声。
四方八方に吹き上がる焔。
巨体が地に崩れる音。
覚醒後、さらに五感が研ぎ澄まされた酒童には、その音が眼前から聞こえてくるもののように思えた。
「よし、いくぞ!」
「応ッ!」
酒童の掛け声と共に、3つの影が杉の枝から飛んだ。
後脚を斬られて体勢を崩している先頭のペルーダに、酒童は村雨丸を抜き放つ。