羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



 茨が瞠目して肩を跳ねあげる。

 その無垢な瞳には、闇の中で光る翠の瞳を持った怪物が映っていた。


「す、酒童さん……」


 普段とは別人のような酒童の気迫に、茨は固唾を飲む。


「大変だ!酒童さんが!」


 茨は大声を張り上げ、仲間の助けを呼んだ。

 酒童には、その声は耳に届いていた。

しかし、酒童は茨になにもいってやれなかった。


「う、ぐ……ふっ……」


 酒童は心の臓を握りつぶされるような激しい苦痛に顔を歪めた。

 痛い。

 苦しい。

 息ができない。

 死にそうだ。

 心の臓が破裂し、血が握り潰された桃から出る果汁のように湧き出るような光景が目に浮かんだ。

 酒童は栗然とした。


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