羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「人権、ですか」
鬼門は吐き捨てた。
「ではあなたは、我々にどのような“鬼”への対処法を提示してくれるのです?
以前あなたがしたように、呪法を用いて地獄のような苦しみを、彼が鬼化するたびに与えろと?」
それで人権とは、片腹痛い。
鬼門は笑止するや、酒童の手をさらに強く握った。
「今回議論するのは、彼の生殺与奪についてではなく、妖か人か、どちらの世界に寄越すかの話です。
我々の“鬼を生かす”という意見が通れば、酒童さんは羅刹としてここに残るでしょう。
しかしそうでなければ、彼の身は妖たちに引き渡される」
鬼門の話に、酒童は戦慄する。
自分が知らぬ間に、人と妖との間で、自分の命をどうするかを検討されていた。
そして妖はどうやら、自分を殺したがっている。
彼らの会話から、なんとなくそんなことが察することができた。
天野田は返す言葉がないのか、悔しげに押し黙る。
「―――それならなぜ、酒童くんにその話をしなかったんですか?」
天野田は静々と口を開いた。
しかしその漆黒の瞳は、明らかな怒気を孕んでいる。
「酒童くん本人に、その話をしてやらなかったんですか」