羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
エレベーターの戸が閉まり、完全な密封状態となる。
酒童は未だに、天野田から漂う女の匂いが、気になって仕方がない。
なんというか、鼻にまとわりつく妙な色香である。
女性には女性特有の甘い香りがすると言うが、陽頼は全くそんな匂いがしないし、
この匂いの元である女が、こんな香りの香水をつけていたとしか考えられなかった。
「ところで酒童くん」
たった数秒の間の沈黙を、天野田が破った。
「普段、羅刹のお偉い様がただけで行われる会議が、
なぜ今回、下っ端の中の精鋭である私たちまで呼ばれたと思う?」
言われてみれば、そうだ。
精鋭といえど、あくまで腕が立つというだけであって、決して地位が高いわけではない。
サラリーマンで例えれば平社員、良くすれば係長くらいである。
対して、会議に集められるのは、その2段も3段も上の人間だ。
下っ端の隊員まで召される理由が、わからない。