羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
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ちょうど、中学の入学式が始まったのと同じ日だった。
珍しいこともあるもので、その年度の新入訓練生の中には、西洋が欧米あたりの異邦人の血を引く少年が混じっていた。
科学者だか研究者だか、とにかく学者を親に持ち、少年自身も、入学直後の確認テストではどの訓練生よりも圧倒的に優れた成績を誇っていた。
訓練生が定期的に受ける中間考査でも好成績を残し、さらには呪法学にも手を伸ばして学んでいるほどであった。
“さすがは、学者の息子”
“凡人とは格が違う”
それが、訓練生たちから少年へと向けられた褒め言葉だった。
―――少年はちっとも嬉しくなかった。
彼らは納得しているのだ。
僕が学者の息子だから、頭脳では勝てないのだと。
頭のいい遺伝子を持って生まれた子供には敵わないからと。
彼らは嫉妬するのではなく、僕を“普通の人とは違った別次元の生き物”と思うことで、劣等感を誤魔化しているのだ、と。
少年にはお見通しだった。
中には本当に自分を褒めてくれているものもいるのだろうが、今さらそんな者が一人や二人いたって、眼中には入らない。
少年は人より大人びていて、背も高く、それでいて顔も綺麗だった。
だから余計に、周囲からエリート扱いにされた。
“天野田ができる奴なのは、やっぱり、天才の血筋だからだろうなあ”
訓練生になって数ヶ月が経過した頃、普通学科で使う教室の外で、クラスメイトたちがそんな話をしているのを、少年―――天野田は教室の中から耳にした。