羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
―――だが、その俗に言う“友情”たるものは、真っ当な形で続きはしなかった。
天野田が口は出さない努力も、酒童は見てくれている。
厳しい訓練に対する弱音だって、酒童になら吐ける。
傍から見れば、彼らはこれ以上にない大親友だった。
が、この“友情”とかいうものは、最高学年である3年生になる頃には、天野田の中で歪な形をとっていた。
「……酒童くん」
3月になるというのに、外は今だに寒風が吹きつけている。
前の月の訓練所は、それはもう火がついたように慌ただしかった。
羅刹の訓練生は、2月のうちに配属される班と地区を選ばなくてはならない。
選ぶと言っても、受験と同じで配属される地区と班にも定員がある。
優先順位は、主に訓練時代の成績と、その面接での姿によって判断される。
一つの班につき、最大で2人の訓練生を班員に迎え入れるのだ。
しかし、定員オーバーで落とされる者も当然いる。
力のある羅刹は、主戦力を必要とする班に、策略家に適した羅刹は、奇襲が得手の班へと移される。
決めるのは、各班の班長たちである。
その班に相応しい人材かとうかを決め、班員にする。
また、希望制だが、高校受験や大学受験もある。
羅刹と学生の両立は大変だが、それでも学校へ通いたいと言う者は多い。
天野田ははじめ、せめて高校だけでも卒業しておけばいいと思い、県屈指の国立高校を受験するつもりでいた。
が、3年生になるころには、進路はがらりと変わっていた。
最終的に彼の進路になったのは、偏差値が50にも満たない底辺な公立高校だった。
理由は当然、酒童がそこに行くと言ったからである。
必死になって勉強して、すれすれの成績で合格した酒童とは違い、天野田は余裕で合格した。
さらに羅刹の班においても、天野田と酒童は二人とも同じ班を選択し、みごと鬼門班に配属となった。
そして何もかもが終了し、卒業を間近に控えた、とある朝。