羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「おや、早いのですね」
穏やかな声色で言う鬼門だったが、その声さえ、酒童には威厳があるように聞こえる。
「大切な会議だと思いましたので……」
肩をすぼめながら、なるべく上目遣いに鬼門を見る。
「そうですね、確かに大切な会議です」
鬼門は戦闘服に巻き付けた首巻で、桜色の唇を隠す。
「先日、呪法班が察知した西洋妖怪の気配と、監視カメラが捉えた映像に、異様なものが映っていたのですよ」
まるで「詳しい事は会議で聞け」とばかりの、曖昧な説明だった。
しかし、
「わかりません」とも、酒童は言おうと思わない。
と言うか、言いたくないのだ。
「呪法班の式占に、そのような異常事態の兆しはありませんでしたが」
天野田ときたら恐れを知らないのか、堂々と班長の前に歩み出て、
「私が出入りしていた班では、特にこれといった異変はありませんでしたよ?」
と、小生意気な口を叩いた。