羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



 その容姿は多種多様で、狼の頭を持つもの、歌で人を死なすもの、獣の体を持つもの、と、バリエーションが豊富で、しかも数が多い。

 もちろん、うっかり珍獣だと思って接近してはならない。


 彼らの主食は「霊魂」そして「人肉」だ。


 彼らが出現するまでは、そんな、西洋妖怪などというものは、架空の生物にすぎなかった。


しかし多数の死者が出て、初めて、人間は実感した。


『西洋妖怪(モンスター)は、地球上のどの生物よりも危険である』ーーと。


 それこそサメよりも、クマよりも。

ワニよりもライオンよりもトラよりも。


 『人の命』のみを餌とするその生物こそ、なによりも有害な動物だ。

挙げ句の果てに、これらは性行為もなしに卵で繁殖するので、余計に厄介だ。



 当初は、日本に駐屯していた米軍も、西洋妖怪の討伐に出動したが、

どれだけ砲弾を浴びせても、動きののろいものしか倒せない。

しかも極度に高い再生能力を持っているため、頭を吹き飛ばすか、胴体ごと心の臓を消滅させなければ、彼らは絶命しなかった。

 核爆弾を使うわけにもいかない。

 だがこの化物を相手にするには、戦車では全く戦力が足りなかった。

そして非力にも、とうとう米軍もお手上げとなってしまったのだった。


『もうアメリカも、頼りにはできない』


 そう判断した日本政府は、米軍からも、どの国からも、武力の援助を求めなくなった。


……だが、援助を求めなくなった頃から、なぜか、西洋妖怪による犠牲者の数が日に日に減っていった。


米軍の戦車も、自衛隊も撤退してしまったのに、だ。





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