羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
(この馬鹿)
酒童は冷や汗をかく。
班長は時間だけでなく、立場にも厳しい。
時折、上司さえひれ伏させるような人物だが、上下関係には犬のごとく忠実である。
いつ天野田が「生意気な口を叩くな」と絞め技をかけられるか。
酒童は気が気でならない。
しかし、鬼門は特にこれといって厳めしい表情にもならず、
「あなたは昨日、呪法班にはきていなかったでしょう」
と返した。
「その昨日にわかったことです」
鬼門はそう言い捨てて、すたこらと会議室に入って行った。
「……あの様子を見ると、班長も詳しい事は知らないみたいだねぇ」
天野田は、さもつまらなそうに吐息をついた。
「なぁ、天野田よ。お前、ドMなのか?
それとも命知らずか?」
酒童の問いを「はっは」と笑い飛ばし、天野田は不敵に笑んだ。
「探究心と命を天秤にかけるなら、私は迷いなく探究心が重いと言えるよ」
断言すると、天野田も続いて会議室へと踏みいる。
いや、普通は命だろ。
酒童はそう言いたくなる。