羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「呪法班の言ってた通りだ」
酒童は奥歯が噛み合わず硬い音を立てるのを聞きながら、濃霧から矢継ぎ早に現れる西洋妖怪の群れを見下ろしていた。
対方向に視線をやれば、そこにはどうすればいいのかわからないといった風情の榊と桃山がいる。
酒童も、正直なところどうすればよいのかわからなかった。
しかし、このまま駆除することを放棄して下の光景を眺めている訳にはいかない。
「……増援を呼ぼう」
静々と天野田が口を切る。
「この人数で飛び込んだら完全に自殺行為だろう。
近隣の班にこのことを連絡するんだ。
それでも足りない時は、全班をここに呼び寄せる。
最悪の場合、呪法班の人たちにも応援要請をした方がいい」
天野田は冷静だ。
酒童は無言のままうなづき、携帯端末を手に取った。
まず榊と桃山に連絡しなくてはならない。
榊の端末に電波を発信すると、その電話はすぐに繋がった。
「榊」
「酒童さん、どうしましょう。
ざっと50はいるんじゃないですか?」
「近隣の班に増援を頼む。
お前は西区の桜田(さくらだ)班に増援を要請してくれ。
できれば、他の班からも欲しい。
こっちは鬼門班に要請する」
「了解です」
榊は声こそ動揺していたが、怖気付いてはいない。