羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》




電話がきれて、酒童はすかさず鬼門にも電話をかける。

電話は暫時つながらなかったが、ほどなくして「なんです」応答があった。



「……鬼門班長、じつは」

「蜥蜴ですか」


鬼門は酒童の言葉にしようとしていたことをぴたりと言い当てる。


「蜥蜴が西洋妖怪の軍勢を引き連れてやってきたんでしょう」

「なんで班長がそれを」

「呪法班の連絡です。
あなたの方にも行き渡っていたはずですが?」


鬼門の言葉に、酒童はギクリとする。

まさかここまで多いなんて。

こんな事態にまでなるなんて。

呪法班の言うことが本当だなんて、あまり信じてはいなかった。

ーーーなどとはとても言えず、酒童は「すみません」と言うばかりだった。


「……あの、現時点で、駆除が完了した班があったら、そこにも増援要請をお願いします。
天野田と俺の班だけでは、とても無理があります」

「数は?」

「目で見てわかる限りで、ざっと50体です」

「わかりました。
そこで待っていなさい。
ある程度の数が集まるまでは、西洋妖怪を追いかけるだけで、手を出してはなりませんよ」

「はい」


酒童は鬼門と対面しているわけでもないのに、大きくうなづいた。

電話を切って携帯端末をポケットにしまうと、「現時点、手は出すなって」と声を張った。

向かいのビルから「あい」と返事が返ってくるなり、酒童は愛刀・村雨丸を抜いた。


「あいつら、道沿いにぞろぞろと歩いてきやがる」

「足止めもダメなのかい」

「だめだ。他の班が来るまで」


酒童は頭を振った。









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