羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「そこで総隊長は、1つの班の構成人数を引き上げる事にした」
地区長が指すスクリーンに、新しくスライドが表示される。
ひとつの班として囲われた枠の中に、4つの人型が映し出されている。
酒童でいうところの、共に地区で活動する仲間の人数を示したものだろう。
だいたい拠点にいる羅刹の数が偶数ならば、彼らを幾つかの班で組み分けし、
それから、ひとつの地区を守護するための班を構成する。
班の定員は4人だ。
しかし今回のように、あれだけの数がいたのだとすれば、とても4人では対応できない。
なので総隊長および羅刹の幹部たちは、1班につき定員を6人に増やすことを決定したのだという。
長話をしずしずと静聴していた酒童の隣で、ふと、鬼門班長が挙手をした。
「しかし、地区長」
高々と挙げられた白い手に、いくつもの視線が集まる。
「どうした、鬼門」
「失礼ながら申し上げますが、羅刹の隊員の中では、今年に入隊してきた新隊員もいます。
彼らも合わせて、われわれの班は、ひと地区に4人という人数を保っています。
しかし、班員を増やすとなれば、私どもの地区のように隊員がぎりぎり間に合っているという所は、
他の場所から羅刹を派遣してもらう他はありません。
それでは、派遣する側の隊が、人員不足になるのではありませんか?」
鬼門の言葉に、地区長は顔色ひとつ変えやしなかった。
「それならば問題はない」