羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


桃山がずれて下がってきた眼鏡を正し、敵の体長を推定する。


「しっかし、ほんとに蛇みたいですね。

600年くらい前の昔に、巨大な蛇が、川にやってきた人間を次々と殺していくアメリカの映画があったらしいんですけど、まさにそれの実写版って感じ」


桃山が、戦闘を前にして他愛のない昔話をし出す。


「すげえ、西洋妖怪もいない時代に、そんな話があったんですか?」


化け物に人が食われるなど、縁起でもない話だが、茨はそんな昔話にくいついた。

「アナコンダだかニシキヘビだか知らねえけど、とにかく、巨大化した蛇と人間の対決を描いた作品だ」

「物知りっすね、桃山さんは」

「邦画コレクターと言え」


和んで良いのか注意すれば良いのか、酒童は彼らの様子をみていて、選択に迷う。

しかし、和気藹々と話をしていて、ここで取り逃がしてしまっては仕事にならない。

酒童は再び気を引き締め、


「そろそろ行くぞ」


と、ひと声かけた。



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