羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
しばらく、その場にいた4人は、銃声に唖然として固まっていた。
だが、いち早く我に返った茨が、
「誰だっ!」
と、吼えたてた。
酒童の鼻は、すぐに銃声の元を嗅ぎ当てた。
真正面にそびえる電波塔。
火薬の臭いは、そこからきていた。
目を凝らせば、その足場からは、毛糸のような煙が上がっている。
「人がいるってのに銃を撃ちやがって、
危ないじゃないかよ!」
電波塔に向かって、きゃんきゃんと喚き散らす茨はさておき、酒童はビルから下に視線をよこした。
下をうごめいていたはずの怪物は、2体とも全く動かない。
痙攣さえしていないようだった。
酒童は無言のまま、ビルから降下した。
「酒童さん!」
桃山が叫ぶが、もう遅い。
酒童はコンクリートの上に着地すると、地に転がる怪物どもの躯を蹴った。
しかしそれは、ぴくりとだって動きやしない。
次に酒童は、何を考えてか、怪物の1体に飛び乗った。
(こいつは……)
酒童は瞠目した。
怪物の躯には、一発の弾痕があった。
残りのものにも、躯の同じ場所に弾痕がある。
その穿たれた穴から血が湧いているのを見る限り、これらは心の臓を撃ち抜かれて、既に死している。