羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
西洋妖怪を死滅させる主な方法は斬首だが、心の臓を傷つけることができても倒せる。
その方法が行われない原因は、2つある。
まず、人型ではない怪物、例えば奇形の怪物が出てきた場合、どこに心の臓があるのか検討もつかない。
当初は爆弾や地雷で、心の臓ごと吹き飛ばしてしまおうという案も出たが、民間人への配慮も考えて、その提案は撤去された。
なので現代では、西洋妖怪の心臓を狙撃で仕留めるなど、もはや考えられないものだった。
酒童も、このような形で西洋妖怪が死ぬのを目にしたことはない。
(あいつか)
酒童の脳裏に、先ほどの銃声と煙がよぎる。
あの電波塔から、弾が放たれたのだ。
そして、一発の銃撃で西洋妖怪を撃ち抜いた者が、あの電波塔にいる。
酒童は顎を上げ、電波塔を見やる。
電波塔からは、黒ごまにも似た影が落ちて行った。