羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「でね、玄関の方で、戸が開く音とか、足音が聞こえてきて」
「それ、俺の足音だと思うんだが」
「うん、幽霊がきたのかと思ったら、嶺子くんだった」
安堵しきったようで、陽頼は顔に笑みを灯す。
「そんなに怖かったなら、電気つければよくね?」
「電気つけたら、目の前にいそうで怖かったもん」
ありえなさそうで、あり得そうなパターンだ。
長年、化け物と戦ってきた酒童だが、確かに視界が明るくなった瞬間に眼前に来られては、ギョッとするかもしれない。
西洋妖怪とは、また別の怖さがある。
「じゃあ、もっかい寝るか。
俺はちょっと着替えてくるから」
「うん……」
後ろで、陽頼がそそくさと電気をつけ、薄暗いオレンジの光に設定する。
酒童は毎度のように戦闘服を脱ぎ、Tシャツと柔らかい生地のズボンを履く。
なるべく早めに寝室へゆくと、そこには、布団を体に巻きつけ、獅子舞の真似でもしているかのような陽頼がいた。
どうやら、酒童がここにくるのを待っていたらしい。