羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



「なんか風邪引いてるみたいだな」

「体はぴんぴんしてるんだけどね」


酒童が横になるまで、陽頼はその体勢のままでいた。

そしてようやく、酒童が寝転がった時を同じくして、布団に倒れこむ。


「今日は早かったんだね」


陽頼が隣で囁く。


「ああ」


酒童は、闇の中では見えないが、意味深な顔で答えた。

今日は仕事が終わるのが早かった。

例の怪物を何者かに討伐されてしまった上、他の地区からの増援要請もなかったため、ひとあし先に拠点へと戻ったのである。

ー無論、討伐ゼロという話を聞いて、羅刹の上官が黙っているはずはないだろう。

班長に絞め技をかけられる覚悟で、例の事件について詳しく話したが、意外にも班長は、なにやら慮って、


「わかりました。
ではあなたたちは、ここで待機していなさい」


とだけ言った。




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