羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


結局、他の地域でも西洋妖怪の数が少なく、彼らも早く討伐を済ませて帰って来たので、今日は午前0時の帰宅となったのだ。


「ふうん。
じゃあ今日は大丈夫だったんだ」


陽頼は酒童のほうに身体を横たわらせ、垂れた目尻をさらに垂らした。


「なにが」

「仕事横取りされちゃったんでしょ?」


横取りと言えるかどうかは不明だが、悪く言えばそうなる。

しかし、それが大丈夫ということではないだろう。

しかし陽頼は、


「だって、一匹も戦ってないってことは、無傷で帰ってこれたんでしょ。
良かったじゃない」


陽頼からしてみれば、無傷で帰ってこそ最善らしい。

だが命懸けで駆除なは望むことを要される羅刹としては、寧ろ無傷で収穫なしというのは、ちと不名誉でもある。

それでも酒童は一瞬、不名誉どころか、無傷で帰って来て得をした気分になる。


「よかった」


酒童が鸚鵡返しにする。



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