羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
すると、
「あぐっ……」
女の苦悶の声がした。
「く、ぁ……っつい……」
あつい。
確かに、女はそう言った。
「……だ、れか……」
助けを乞うてくる女の声を聞いても、青年は顔色ひとつと、かえやしなかった。
いいや、それどころか、青年の唇はみるみるうちに吊り上がり、
ついには白い歯をむき出して、下衆の笑みを浮かべていた。
「……どうしたの?」
存分に女の苦悶の声を堪能すると、青年は素知らぬ顔で部屋へと戻り、苦痛らしきものに身体を捻って悶える女に声をかけた。
「たっ……た、すけて……!
身体が、苦、しい……熱いの……」
両腕を掴んで、必死に女は訴える。
そんな彼女を冷徹にも、青年は、
「そうかな、熱があるようには見えないけど。
時間が経てば引くと思うよ?」
と、ありきたりなことをぬかして、あしらった。
ベットに横たわる女が苦しみぬく姿を、青年はただただ、黙殺している。
ーーそんな状態が、かれこれ半時間も続いていた。
「う……っ……はあ……はあ……」
もう身体を動かす気力も削がれてしまったようで、女は痙攣して動かなくなった。
「そろそろいいかな」
そう呟くと、青年は女の背中から、例の札を剥がしとった。
札に記された鮮やかな紅の文字は、いつの間にか、どす黒い赤へと変わっていた。
札をポケットにしまいながら、青年はベットの上に膝を突く。
「……死体を抱くみたいだねえ」
残忍に吐き捨て、青年は、女の衣服をそろそろと脱がしていった。
女といえば、気を失っているのか、まるで動く気配はなかった。
*