羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



「……お前さ、この7年間、どこでなにやってた?」


酒童は、ずっと胸に秘めていた言葉をようやく吐き出した。


訓練生を、下から3番目の成績で卒業してから、朱尾は、どこの羅刹部隊に所属するでもなく、あたかも煙のように失踪した。

朱尾は運動能力も高かったし、剣術の技量もあった。

それなのに、卒業する頃の成績はワースト3位だ。


『俺は卒業したら、酒童先輩と同じ部隊に入る』


そう決意表明していたのに、彼が卒業してから、何ヶ月たっても、朱尾は拠点にやってくるどころか、顔さえ見せなかった。


そこで異変に思った酒童が、訓練所へ向かって聞いたところ、

朱尾は羅刹という国家資格を取得していながら、どこの拠点にも所属せず、故郷の山へと帰ったという。

それからというもの、朱尾仁志生は、一度だって酒童の前には現れなかった。


ーーそんな後輩は、酒童とまっすぐに対峙すると、隣においていたゴルフバッグを立てた。



「……すいません。
実家に帰って、そこから、近所の高校に通ってました。
羅刹の拠点も、どこにも所属してません」


朱尾は顔に反省の色など浮かべてはいなかったが、少しばかり視線を落としてはいた。


「俺の実家、仲津村なんすよ。
そんで、高校卒業した後は、お山でずっと猟師やってました」


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