羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
淡々とした彼の口調は、おのずと、昨日の地区長を追想させた。
「このゴルフバッグの中身、俺の愛銃なんです。
爺さんの代からあるやつでしてね。
うちじゃあ『雑賀孫一(さいかまごいち)』って呼んでるんすよ」
朱尾がゴルフバッグを撫でる。
相当な愛着があるのは伝わってきたが、羅刹として肝心な日本刀が見当たらない。
「朱尾。刀はどうしたんだ。
卒業生は皆、授与されるだろ」
「一応持ってますけど、あんまり使ったことないっすね」
朱尾は言った。
「今じゃ俺の武器は、この孫一だけなんで。
いや、刀は持ち歩いてんですけど、肉を斬るときくらいしか使いませんよ」