羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


なるほど、さすがは猟師。

獣を狩るのはお手の物というわけか。

一瞬だけ酒童は納得するが、ふとその質問に違和感を覚えた。

鹿と猪ときて、なぜケルピーが出てくるのだろうか。

ケルピーというのは、西洋妖怪の一種である。

上半身が白馬、下半身が水生の哺乳類のような形状のものだ。

川などに生息するとされ、もちろんこちらも肉食である。

そこで、酒童は昨日の会議の一端を思い起こした。


『仲津村』


あの村の逸話についてのことだ。


600年も前は、スズメバチだとか外来のザリガニだとかを捕って食べるという風習があった。

増えすぎた生物を、食用を目的とした狩猟の対象にする、といったことは、今でも地方の集落ではあることだが、中でもこの仲津村は、異様な風習を持っていた。


西洋妖怪を喰うのである。


仲津村は狩猟と農業が入り混じった集落だが、数百年前の大不作で野菜が取れなくなった時、切羽詰まった村人が、少しでも食うものを得ようとして狩りにでた。

しかし、いつまでたっても獲物は見つからなかった。

結局、村人は諦めて帰ることになったのだが、その時はすでに夜だったという。

そして運悪く、獣型の西洋妖怪に遭遇した。




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