無題
彼女と彼



彼の手が私の胸を撫ぜる
これ見よがしに声をあげてみたけれど、彼の興味なさげな死んだ目が視界に入った
本当を言うと彼の目はいつだって死んでいるのだ


今日の理由は何だったか
昨日は確か、仕事でミスをしたとかなんとか
落ち込んでない癖に私の元に来ては私を抱く
そしてろくな会話もせずそのまま帰る、その繰り返しに私は有意義性を見いだせない


彼に聞いてみたら
一種の暗示かもしれないし、単なる気紛れかもしれない
と意味深なことを言っていた
馬鹿だから、きっと深い意味もなく言ったのだと思う

彼の暗示とは
一体何をさすのか私には分からないが、私とすることなんてセックスだけなのだからきっとこの行為のことだろう
意味のない行為に彼は意味を見つけたのだろうか


次の日も彼が来た
顔を真っ赤にしていたので、酒を呑んできたのだと目に見えて分かった
私は酒は嗜む程度だし、元々匂いが鼻について嫌いだから、彼にも私に会いにくるときは控えてもらっていた
最も、彼とお酒を呑む相手なんて限られているから、彼もあまり呑まないようだったが

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