無題


私の形ばかりの文句を素通りし、彼は大きな巨体を折り曲げ、私の胸に顔を埋めて自分より小さい私に全身を預けるようにした
重たいと口にだしてやりたかったが、セックスしてるよしみだと、黙ってやった
彼の背中は泣いているようだった
決してそんなことはないのだけれど

暫くして、彼はそのまま私をいつも通りにベッドに押し倒した
彼の死んだ目と目があった
綺麗な青色が深い暗く濁っていて、それが瞳の奥にいつまでも続いている
まるで淡い青空に黒い太陽が浮かんでいるようで、とても綺麗だと、そう思った

彼が何を隠して何を考えてなんて私には分からないが、黙って抱かれてやることが慰めになるのだろうか
いや、一種の暗示だと彼は言っていたから、暗示という言葉を此処で使っておこう

年寄りみたいなセックスも終わり、いつも通り彼の帰る背中を見送る
図体だけ育ちました
そんな空気を漂わせる背中に私は何も声を掛けなかった

彼は、きっと、明日も明後日も私を抱くのだ
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