好きだなんて言わなければよかった【完】
「うわ!本当だ、あと、10分もないじゃん!!旭!ポップコーン持って!はやくしないと、始まっちゃう。あ、慎也さんも映画行くんですよね!?」
普段よりも、まくし立てるように話す私に、慎也さんは、ポカンとした表情を浮かべ、旭はやれやれといった感じで従っている。
「うん、行くけど…」
「じゃあ、慎也さんもはやく行きましょう!何でも最初が大事なんですから!特にホラー映画は!!」
「…はは、そ、そうだね…」
そう呟いて、あはは、と、苦笑いを浮かべる慎也さんを横目に、
「…姉ちゃん、先行くよ」
二人ぶんのポップコーンを持った旭はスタスタと、劇場の入り口に向かって歩きはじめる。
「ま、待ってよ、旭!」
私もそんな旭を後ろから追いかけた。