好きだなんて言わなければよかった【完】
「……」
「…小夜子ちゃん、だよな?…オレのこと覚えてないかもしれないけど…」
黙り込む私に向かって、淡々と、話しかける男の人の声。
それは、一度しか直接会ったことがないはずなのに、あまりにも鮮明に覚えていて、正直、自分自身驚いた。
…そういうこと。
「……真生さん、ですよね?…旭くん使って紗綾の居場所聞き出そうなんて…卑怯じゃないですか?」
できるだけ感情を押し殺して、私は言葉を紡ぐ。
…そうしないと、勢いに任せて怒鳴りつけてしまいそうで、怖かった。
「…っ、違うから。小夜子さん!…小夜子さんに電話しようって提案したのオレなんだ…、」
後ろから慌てたような旭くんの声が聞こえる。