好きだなんて言わなければよかった【完】
知らない男の人の声と姿が脳裏に浮かび上がった。
それは、私の中では全く覚えがない記憶。
…っ、なんでいきなりこんな覚えがない記憶が?
恐怖心からか、思わずギュッと、手を強く握りしめる。
その時、
「…紗綾ちゃん!ジュース買ってきた…って、さっきより具合悪そうじゃん!?マジで大丈夫?」
入り口の方からジュースを両手に持った慎也さんが走りよってきた。
「…あ、大丈夫です…ジュースありがとうございます」
軽くお礼を言って彼が差し出したジュースを受け取ろうとする私。
…すると、また覚えのない記憶が唐突に浮かんでくる。
『…紗綾!』
あれ?今度は真生くん…?
さっきまで感じていた恐怖心はなかったが、慌てたようか顔の幼い真生くんの姿が妙に印象的だ。