好きだなんて言わなければよかった【完】
*記憶
───…
そうだ、私は、この公園で誘拐されかけたんだ…。
全てを思い出し、私は震える肩を強く抱きしめる。
「…わたし」
何で今まで忘れてたんだろう?
そう思えるくらい鮮やかに脳裏に焼き付いた記憶は、もう何年も前のことだとわかっていても、震えがおさまらない。
お母さんからも、美生さんからも聞いたことがない私の誘拐されかけたという過去。
「…紗綾ちゃん、本当に顔色悪い。今日はもう帰ろう」
「…慎也さん、私…」
まだ、きちんと伝えられてない。
「…大丈夫。わかってるから…まぁ、オレも薄々わかってたことだし…ね」