好きだなんて言わなければよかった【完】
…あの時、
幸いにも、近くにいた大人に助けられた私と真生くん。
しかし、
その出来事がトラウマとなり、しばらくの間私は、外に出るどころか、幼稚園にすら行けなくなってしまっていた。
「…紗綾!大丈夫、オレがついてる。もう、あんな怖い思いは二度とさせないから」
毎日、毎日、真生くんは、そう言って私を励ましてくれた。
「…もう、忘れていいんだ。大丈夫だから」
泣きそうな表情でそう呟く真生くん。
たぶん、彼自身、かなり責任を感じていたんだと思う。
そして、私はいつしかこの事件の記憶を無理やり忘れようとしたんだ。
…当時の私には、それが最善の方法だったのだろう。