好きだなんて言わなければよかった【完】
「…紗綾だよな?」
そう確認するように呟く声。
…懐かしいその声を私が間違えるはずがない。
……でも…なんで?
今さら、こんなとこで会いたくなんてなかったのに。
私は、そう思いながら、ギュッと噛み締めた唇を無理やり、引き上げると、
「…わぁ、真生くんだ!?久しぶりだね!元気にだった?」
くるりと、振り返り、笑顔でそう答える。
「紗綾、お前、いつ、こっちに戻って…」
「あ、高校からこっちにしたんだよ?さすがに、全寮制ってさ、自由がきかなくて、大変大変!!それに、やっぱり、家がいいかなって思ってさ〜」
真生くんのその質問に昔の私のように、明るく答えた。
私、今、上手く笑えてるよね?
「…え?なに、真生の知り合いなの?てか、さっきと全然性格ちがっ……てっ!」
「あ、あは、あれ〜慎也くん?どうかしたの〜?私はいっつもこんな感じじゃん」
バシッバシッ
変なの〜、そう言って、私は余計なことを言おうとする慎也くんの背中を叩く。
「…そ、そうだ、いや、ですね」
「だよねー」
うふふ、と慎也くんに向けて笑顔を向けると、ピタリと慎也くんが硬直した。
そして、みるみるうちに顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
あれ?叩きすぎたかな…?