好きだなんて言わなければよかった【完】



「……どうも、紗綾の友達の小手川小夜子です」




一瞬の間をおいて、小夜子がぎこちなく挨拶をかわす。




「…あ、麻木慎也です、よろしく」



慎也くんに対して、小夜子は、軽く頭を下げると、



「あの、私たちこれからまだ買い物の続きがあって、橘さんとは、積もる話もあるかもですけど…」



真生くんを見つめてそう呟いた。



「…あ、そうだよな。気づかなくてゴメン」



「…ううん、気にしないで。私も真生くんたちに会えて嬉しかったから」



「…紗綾、行こうか」




「…うん」



小夜子に連れられ、私はその場を離れようとした。





その時、




「紗綾、これ、オレの番号とアドレス、オレ、今度久々に家に帰るつもりだったから、その時にでも、話そう、オレも話したいこといっぱいあるしさ」




そう言った、真生くんの手には、番号とアドレスが書かれた紙が握られていて、




「…わかった、連絡するね」




私がそう言って、紙を受けとると、真生くんはホッとしたような表情を浮かべる。




そして、



昔みたいに私の頭を軽く撫でると、慎也くんの方へと去っていったのだった。




< 50 / 404 >

この作品をシェア

pagetop