好きだなんて言わなければよかった【完】
「……どうも、紗綾の友達の小手川小夜子です」
一瞬の間をおいて、小夜子がぎこちなく挨拶をかわす。
「…あ、麻木慎也です、よろしく」
慎也くんに対して、小夜子は、軽く頭を下げると、
「あの、私たちこれからまだ買い物の続きがあって、橘さんとは、積もる話もあるかもですけど…」
真生くんを見つめてそう呟いた。
「…あ、そうだよな。気づかなくてゴメン」
「…ううん、気にしないで。私も真生くんたちに会えて嬉しかったから」
「…紗綾、行こうか」
「…うん」
小夜子に連れられ、私はその場を離れようとした。
その時、
「紗綾、これ、オレの番号とアドレス、オレ、今度久々に家に帰るつもりだったから、その時にでも、話そう、オレも話したいこといっぱいあるしさ」
そう言った、真生くんの手には、番号とアドレスが書かれた紙が握られていて、
「…わかった、連絡するね」
私がそう言って、紙を受けとると、真生くんはホッとしたような表情を浮かべる。
そして、
昔みたいに私の頭を軽く撫でると、慎也くんの方へと去っていったのだった。