好きだなんて言わなければよかった【完】
*疑惑<慎也side>
慎也side
「…私は、もう何年も前に真生くんにフラれてますから」
紗綾ちゃんが溢したその言葉にオレは自分の耳を疑った。
は!?フラれた?紗綾ちゃんが、真生に…?
“そんなはずない”
と、喉まで出かかった言葉をどうにか押し込め、オレは、もう一度紗綾ちゃんを見つめた。
曖昧に笑う紗綾ちゃんが、嘘を言っているようには到底見えない。
けど、
真生は、絶対に、自分から女の子にアドレスを教えたりしない。
たとえ、それがどんなに仲が良い女友達だとしてもだ。
相手から聞かれたら、もちろん教えるが、実際、オレは、真生と付き合いはじめてから1度も真生が自分からアドレスを教える姿を見たことがなかった。