エクスタシー 2 〜極貧のオンナ?〜
車が信号で停まるたびに、周囲の視線を感じる。

その眼差しに含まれている感情を想像しないようにした。

イケてない女がカネにモノを言わせて、極上の男を連れ回してるようにしか見えないのはわかってるから。

―――普段着のタケルと出歩く時でさえ肩身が狭いのに……。

なかなか信号の変わらない交差点で、顔を伏せ、また溜め息をついた。

その時、不意に手を握られた。

大きなエメラルドのはまった豪華なリングも、全く嫌味に見えない美しい手。

ハッとして見た悠斗は、私を安心させようとでもするように優しく笑っている。

グラッときた。

自分でも驚くぐらい、ドキドキしている。

―――ち、違う。この人は私が好きなわけじゃない。

必死で自分に言い聞かせていた。


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