エクスタシー 2 〜極貧のオンナ?〜
尚道はスタッフルームでクリムトの画集を眺めていた。

本当に絵画が好きな男。

暇さえあれば、こうやって画集や絵描きの本を読んでいる。

けど、自分自身は絵の才能も商才もない男。

あるのは誠実さだけ。

心から絵を慈しむような表情を見ていて、なぜかわからないけど、胸の奥がちくんと痛んだ。

あたしはその痛みの理由を考えないようにして、尚道に声をかけた。

「ちょっと、ギャラリーの方へ来てもらっていい?」


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